ログイン*** 2月13日、この日はいつも通り大学に通い、終わった足でスーパーの鮮魚コーナーのバイトに行った。病欠で人手が足りないということでコンビニのバイトを断り、スーパーの方に顔を出していたのだけれど。『この日のバイトを悪いが、19時上がりにできないだろうか?』 という指示が、先月に穂高さんからされていた。 ゆえに早々と時間変更の手続きをして2時間半だけ働いて外に出たら、見慣れた赤い車が従業員出入り口の前を塞ぐように停められていた。運転席に座る、穂高さんと目が合う。「ホントに来ちゃったんだ。どういう理由を使って、お休みをもぎ取ってきたんだろう?」 そんな疑問を口にしながら、ドアを開けて助手席に乗り込む。「お疲れ様、千秋」 直接聞くことのできる労いの言葉に、口元が緩んでしまう。いつもならスマホ越しで聞く言葉なので、嬉しさもひとしおなんだ。 ――だからこそ、気がつくことがあるんだ。「ありがとうございます。あの、穂高さん……疲れてるんじゃないんですか? 声に張りがない感じがしますけど」 ぐいっと顔を寄せたらギョッとした顔で、顎を引かれてしまった。「ま、まあ長距離運転してきたし、多少の疲れはあるかもしれないね」 誤魔化す時によくする営業スマイルで俺を見つめても、騙されないんだからな。「ところで、どうやって仕事を休んできたんですか? 漁の最盛期だっていう話を、船長さんから聞いているんですけど」「バレンタインのチョコを貰うために、千秋の所に行ってくると伝えたのだが」 何でそれであっさりと休みが取れちゃうんだよ、呆れた……。「どうせ穂高さんのことだから、気を取られてドジばかりしていたんでしょうね」「どうして分かったんだい?」「( ゚ ▽ ゚ ;)エッ!!」 まったく、困った人だな。だからお休みを戴けたんだ、納得!「千秋は俺のことを、本当によく理解しているね。嬉しく思うよ」 呆れ果てて固まる俺を尻目に、疲れを若干引きずりつつも、ニッコリとほほ笑みながら、アクセルを踏み込んでスーパーから車を出した。「……あの、どこに向かうんでしょうか?」「メンズキャバクラ、Shangri-la(シャングリラ)俺の元職場なんだが」 むー、ホストクラブとメンズキャバクラって、何が違うんだろ? 女性客を相手にするのは、何となく分かる感じだけどな。「そこの
「チョコが途中で割れないようにぷちぷち包装OK、手紙も入れ忘れしないようにっと」 働いてるコンビニでバレンタインフェアが始まってから、急がなきゃという感じで用意したチョコレート。お酒好きな穂高さんに合わせて、ウィスキーボンボンの詰め合わせを買ってあげたんだ。 ついでといっては何だけど、いつもお世話になってる船長さん用に、日本酒の入ったチョコも添えてみた。分かりやすいように宛名をつけて――。「喜んでくれるといいな、穂高さん」 別れた後だった去年のバレンタイン。大好きなのに渡せなかったからこそ、今年は無駄に力が入ってしまう。「あとは、大手通販会社から取り寄せた『ホットコット』を入れてあげてっと。意外とかさ張っちゃうな」 張り切ったせいで用意していた箱の中が、ぱんぱんになってしまった。 コンビニで販売している雑誌で、新製品を試供しまくり酷評している特集記事を見つけたので、休憩時間に購入して読んでみたら、CMで話題のあの製品の保温率がそんなに高くないことを実験結果で知り、1番あったかい商品として紹介された物を、自分用と穂高さん用に通販で買ってみたんだ。 実際に着てみると、想像以上に着心地がいい上に軽くて温かい――さすがは、ナンバーワンと称されたことはある! 寒空の下、冷たい海の上で仕事をしている穂高さんにピッタリだよね。 温かいことが実証されたので追加注文して、穂高さんの分を数枚購入。通常の商品よりもお財布に優しくて、すごく助かってしまった。「本当はバレンタイン当日、俺があっちに行って直接あたためてあげたら、喜んでくれるんだろうけど」 2月は節分に使う豆や恵方巻き販売、そしてバレンタインと毎週イベントが目白押しで、バイトを休むことが出来ないんだ。「チョコはいいとして、バレンタインにあったか肌着をプレゼントするのは、正直色気がないけれど、あの穂高さんでも俺が体を気遣ってることくらい分かってくれるよね」 あるいは――。『これを脱がせたいから、送ってくれたのかい?』 なぁんて幻聴が聞こえてしまったのは、一体何でだろう?「それを言わせないための、爆弾投入して終了!」 アクセントとして小物入れになってる、キ○ィの顔の形のガラスケースを用意してみた。小物入れ部分には予め、小さなチョコが入っている。食べ終えたら好きな物を入れてくださいねって、手紙に書
*** なんだかんだで夕方までしっかり康弘君に拘束されて、遊び倒してしまった。穂高さん、寂しがっていないだろうか?「寂しさのあまり、康弘くんに嫉妬しなきゃいいけど……ただいま!」 引き戸をガラガラっと開けて大きな声で言ってみたのに、穂高さんが出てこない。それだけじゃなく薄暗い家の中、明かりも付いていない状態だ。「……でも靴はあるから穂高さん、家にいるな。トイレに引き篭もっていたりして?」 あれこれ考えながら引き戸を閉めて靴を脱ぎ、家に足を踏み入れた瞬間だった。「お帰りなさいませ、千秋様。おしぼりをどうぞ!」 居間に続くドアが音もなく開け放たれたと思ったら、ビシッと決めまくった穂高さんが頭を下げながら、ずいずいっとおしぼりを差し出してきた。「ええっ!? な、何……一体」 ――いきなり、何のイタズラなんだよ!?「今宵は千秋様のお相手をさせていただきます、穂鷹(ほだか)と申します。以後、お見知りおきを」 強引におしぼりを手渡され、反対の手には名刺らしきものを握らされた。「……ホストクラブ、ラバーズ、店長兼ホスト、穂鷹。何ですか、これ?」 あまりの展開についていけずに、思いっきり呆れ返るしかない。「慌てふためくことはない、安心してくれ。俺が勝手に、千秋に尽くしたいだけだから」「尽くしたいからって、何でそれがホストクラブになっちゃうの?」「尽くすと言えば、ホストクラブだろう?」(――どうして、そうなる!?)「あのね、穂高さん。俺は普段から、すっごく尽くされまくっているよ。だからこんなことをわざわざしなくても、大丈夫だから!」 おしぼりをぎゅっと握りしめてこうやって力説しても、彼には伝わらない可能性が高い。ちょっとだけ常識とのズレがあるせいで、何度も苦労させられているからこそ分かってしまう事実に、言葉が続かなかった。 焦る俺を見て、何故だか魅惑的に微笑む。この笑みが正直、厄介なんだよな――。「夏休み最後の思い出に千秋には是非とも、ホストクラブの体験をしてほしくてね」 言い淀む俺を尻目に素早く腰を抱き寄せてきて、居間に導いてくれる穂高さん。薄暗い中に、オシャレな形をしたキャンドルが点々と置かれていて、炎を揺らめかせていた。 キャンドルという小物ひとつでムードが漂っている様子を、息を飲んで見つめるしかない。 ――見慣れた部屋が、全然
***『我慢している穂高さん、大人(^^)』 なぁんていう読者さんから、あり難いコメントを戴いたのだが――。 あの時、千秋のパンツ(分身)を手にしていなければ、あんな風に笑っていられなかったと思う。あれがもし自分のパンツだったなら、きっと計画倒れになっていただろう。 ――千秋を外に出さず、ずっと傍にいさせただろうから。 そして現在誰もいない家の中、千秋が着ていたパジャマを手に洗濯機の前に佇んでる俺って……。「早くシーツと一緒に洗濯してやり、外に干さないと乾かなくなってしまうのが分かるというのに、寂しさのあまり手放せないとか」 自分から千秋を追い出しておいて、この有様なのである。思う存分に、パジャマに頬ずりをしてから。「エイ!(*`◇´* )ノ ・゜゜・。」 手荒く洗濯機に向かって放り投げ、音を立てて蓋を閉めてスイッチON! 故にまーったく、大人じゃなかったのです。みんなの期待を裏切ってしまい、大変申し訳ない←見えない誰かに、必死に謝る穂高氏「これで心置きなく、作戦が遂行できる。名付けて『千秋、はじめてのホストクラブ体験☆』」 洗濯機の前から身を翻し、らんらんらん♪とスキップして居間に移動して、引き出しからアロマキャンドルを取り出した。間接照明代わりに使おうと、ちゃっかり用意していたんだ。 どこら辺に配置すればムードが漂うだろうかと、うんうん唸りながら考える。暗すぎても明るすぎても駄目、バランスが大切だからね。 ベストな配置にセットしてからテーブルの前に座り込み、予め用意しておいた名刺くらいの大きさの厚紙を眺めた。「さて、と。ホストクラブの名前を、どんなものにすべきか。千秋が好みそうなものは、何だろうな」 島にいるから『愛らんど』なぁんていうのを考えたのだが、明らかにキャバクラっぽくて笑えない。「ここは安易だが、LOVERS~ラバーズ~で手を打とう!」 義兄さんのネーミングセンスが、実に羨ましい。Paradise(パラダイス)やシンデレラだの、ホストクラブの名前にはピッタリ過ぎる。 ブツブツと独り言を呟きながら厚紙に、店名と名前を書いていった。 他にも必要な物を用意し、千秋がいつ帰って来てもいいように準備する。昔着ていたホスト服を身につけ、髪型もビシッと整えて鏡の前で微笑んでみた。「千秋が楽しめるように、しっかりとサービスし
穂高さんと一緒に線香花火を楽しみ、オマケと称して外でも楽しんでしまい――(穂高さんがコソッと言ったんだ、これはオマケだよって) その後、何故だかキ○ィのパーカーを無理矢理に着せられてしまった。 コスプレさせられた腹いせに家に帰ってから、穂高さんを襲ってやったんだ。押し倒した俺の顔を仰ぎ見る顔が、嬉しそうなことこの上ない!『ほらほら、どうしたんだい千秋? お口も手も、さっきから止まっているが』「やっ、こっ、これからが本番だって」『ほほぅ、本番ね――服を着たままヤろうなんて、さっきの続きをしようと考えていたりするのかい?』 フードに付いてるネコ耳が、ふるふると震えているよ。なんて言われてしまい、ますます恥ずかしくなってしまった。『そんな格好で扇情的な顔をされたんじゃ、ある意味拷問に近い。俺のココが、千秋を求めてるのを分かっているクセに。ワザとこんな風に焦らすなんて』 言いながら、ぐいぐいっと下半身を押し付けてくる。 窓から入ってくる月明かりで穂高さんの表情が、とても切なげにしているが見えても、恥ずかしさを妙に意識してしまってから、指先ひとつすら動かせないとか……。『ね、前と後ろ、どっちからがいい?』「へっ!?」『ネコ耳フードを被ったままの君を、どうしてヤろうかといろいろ考えたのだが。アングル的に、どちらも捨てがたいくらいにオイシイな、と』「……オイシくないです」 何でこれ被ったままスる前提でいるんだ、この人は――『よし、両方試してみようか!』「えぇっ!? ちょっ、待っ――うわぁあっ」 居間の床の上へと俺の身体を簡単にチェンジした穂高さんに、驚いたり呆れたり。『腰が痛くならないように、クッションを敷かないとね。まずは、前からトライしてみようか。千秋の感じる顔、たくさん見たい』「もぅ、たくさん見てるクセに」『何を言ってるんだ。今の姿は、普段見られないものだろ。ただでさえ可愛いのに、そんな格好をしているからどうやって啼かせようか、いろいろ考えてしまってね。ふっ』 しまったと思った時には既に遅く、穂高さんの手によって散々感じさせられ、出なくなるまで絞らされる展開に発展してしまったんだ。 そんな状態だったので目が覚めた時には、お昼近くになっていた。隣で寝ていたであろう穂高さんは、とっくにいなかったのである。「俺なんかよりも充分に
*** ザザーン……ザザーン……パシャッ… さっきまで聞こえなかった波の音が、耳に心地よく響いてくる――それだけじゃなく、火照った身体を冷やしてくれるような気持ちいい風を感じることが出来て、ゆっくりと目をつぶった。「千秋、寝ちゃダメだよ。風邪を引く」 後ろから抱きしめている穂高さんが腕の力を強めつつ、俺の身体を揺り動かす。この温もりがあれば、絶対に風邪なんて引かないと思うのにな。「寝てないよ。ただ感じていたかっただけ、五感全部を使って覚えておきたかったんだ。夏休み、最後の思い出に」「……まだ、感じ足りなかったのかい?」 その解釈の意味が分からない。俺の台詞が、おかしいのだろうか。「もう、感じまくっていたのを知ってるクセに、どうして足りないなんて言えるのかな……」 呆れた声をあげた俺を宥めるためなのか、うなじにキスを落してきた。そのせいで、さっきまでの出来事を思い出してしまう。『くっ…ちあ、き。気持ちいいかい?』『んんっ、はぅ……んぁっ、は、あぁ――』 外でいたしているというのに、容赦のない4点責めに喘ぐことしか出来ない自分。背後から穂高さんの指を口の中に突っ込まれている時点で、マトモな答えが出来るハズがない。『ね、いつもより締めつけているのは、俺を早くイカせようとしているから? すごくっ……キツい、よ千秋』『ひがっ…あぁあぁ、ぅあっ……んっ!』 耳元で囁きながら耳の穴に舌を突っ込み、ぐちゅぐちゅ責め立てるとか本当勘弁してほしい。 前回はお酒の勢いが手伝ったから、いつもよりハメを外してしまったところがあったけど、今は羞恥心が勝っていて、落ち着いてなんていられないというのにな。 それをぶち壊すためなのか、いきなり始まった4点責めで、それをどんどん壊されていった。 穂高さんの右手は俺の舌先を感じるように弄び、吐息をかけながら耳周辺をペロペロしながら、反対の手は俺のをしっかりと握りこんで、ゆっくりと扱いている。 これだけでも充分すぎるくらいなのに更に俺を乱そうと、強弱をつけて中をかき回す穂高さん自身に、どんどん堪らなくなっていったんだ。「んぁっ…ほらか、さ…あひがっ、つらぃ」 ずっと立ち膝の状態でいたせいか、ガクガク震えてきてしまい立っているのがやっとだったので、言葉にならない声を出し哀願してみる。「もう少しだったのに、残念だな